フランツ・フェルディナンド『トゥナイト』アルバム解説
発売日:2009年1月26日
プロデューサー:ダン・キャリー
最高位:イギリス-第2位 アメリカ合衆国-第9位 日本-第6位
このアルバムはメンバー自身が語っている通り、テーマは夜で、ドラムマシーンやシンセを多用し、その他にもスタジオのテクノロジーを利用して色々な実験を行っており、正に地下の実験室でフランケンシュタインを誕生させているような印象を受ける。前作『ユー・クッド・ハヴ・イット・ソー・マッチ・ベター』がシングル『ドゥ・ユー・ウォント・トゥ』に代表されるように、変態くねくねロックダンスアルバムで、高速でキャッチーなメロディが好評だっただけに、今作も期待したファンも多かったと思うが、見事に裏切られる結果?となった。チャートとしては前作からの期待値で、まずまずだったかもしれないが、セールス的には確実に落ちている。今作は何が裏切られているかというと、古いアメリカの新聞に掲載されている事件現場の写真のような暗いアルバムジャケットが暗示しているように、前作に比べて全ての曲のテンポが遅いこともあり、ダークな雰囲気が漂っているという点だ。だから、前作よりもキャッチーではないから、即効性が落ちているという点だ。しかし、繰り返し繰り返しこのアルバムを聴くうちにこのアルバムの本質が分かってきて、全然悪くないどころか前作を上回る熟成された前作を凌ぐ傑作アルバムであることが分かる。前作より大人しくなったとはいえ、前作の彼らと比べて大人しいというだけで、やはり他のイギリスのロックバンドと比べるとこのアルバムの変態さは、群を抜いている。ただ、前作みたいに勢いでドド~ンとでてきたアルバムとは違い、どっしり腰を据え付けてサウンドが作られているもんだから、前作よりは落ち着いた印象を受けるだけである。各曲単位に聞くと、つなぎのような曲もあるが、曲と曲のつなぎ方や曲順は計算されていると思われ、アルバム通して一つのコンセプトとして完成された作品となっている。ただ、10年後に聞いたら前作も今作も同じ路線に聞こえるかもしれないけどね。
★★★☆(3.5点)
1.Ulysses ・・・ ★★★
アルバム先行シングル。先行シングルにしては、静かなビートで始まるかなりクールな仕上がり。電子音も多用されていて、彼らの持ち味である途中からの変調あり、盛り上がりありなのだが、決して悪くはないが、クールに抑えた感じとなっており、このアルバム全体を象徴するかのような作りになっている。しかし、他のバンドがやっていれば十分派手なんだが、今までが今までだからクールに聴こえる。この事が吉とでるか凶とでるか待望されていたはずなのだが、本国イギリスではシングルチャートは20位どまりとパッとしなかった。
2.Turn It On ・・・ ★★★
2曲目は1曲目よりもさらに渋く決めている。これも彼らにしてみればなのだが・・・。2分20秒と短くまとめられていて、盛り上がりらしい盛り上がりは出だしのドラミングぐらいで、後はディスコティックな踊れるベース音が鳴り響く。決して悪くはない。
3.No You Girls ・・・ ★★★☆
邦題は『キャサリン~ガールズ・ネヴァー・ノウ~』。3曲目にしてようやくらしい曲登場。小気味よいギターやベース音電子音が絡み付いて音の洪水となってタテのりな変態ディスコティックサウンドとなっている(それでも今までよりは地味だけどね)。やっぱりフランツ・フェルディナンドは曲のノッケから踊らしてくれなくちゃ、らしくないね。これを最初にシングルカットしていれば、このアルバムのイメージも変わっただろうに。日本のタイトルがなんでキャサリンなのかよく知らんが、日本では映画『ピューと吹く!ジャガー~いま、吹きにゆきます~』の主題歌でおなじみ?iPodのCMにも採用されている。
4.Send Him Away ・・・ ★★☆
軽いタッチの小気味のよい歌。同じパターンでリフレーンするギター。3分足らずの曲。やはり、ただでは終わらず終盤忙しくなる。
5.Twilight Omens ・・・ ★★
電子オルガンで哀愁を漂わせる多少不思議な音色というだけで、可もなく不可もないつなぎの曲。
6.Bite Hard ・・・ ★★★
前半のラスト。5曲目の流れで地味目のバラードでくるかのような、イマジン風ピアノで始まる。歌はエルヴィス・コステロの名曲『シー』を思わせる歌いだし。と、思いきやビーチ・ボーイズの脳天気サウンド風に転調して一気に縦ノリのサウンドに早変わり。ギターサウンドもキレのいいカッティングやら渋いリードやらグワングワン目まいを起こさせる得意の音やらヴァラエティに富んでくる。
7.What She Came For ・・・ ★★★
ちょっと変わった雰囲気でいい味を出している。元々彼らは変化球は多いのだが・・・。ドラムス・ベース・シンセが絡みつくオープニングから淡々とAメロ→Bメロとヴォーカルが重なり、一緒に叫びたくなるようなサビで盛り上げてラストはギターが狂いまくる。と、いったいい展開の曲です。
8.Live Alone ・・・ ★★★
ドンドコドンドコ湧き上がってくる音。ピコピコテクノサウンドっぽい音。ドラマティックに展開する曲だが、特に起承転結の転の部分に入ってくる渋いヴォーカルがかっこいい。
9.Can't Stop Feeling ・・・ ★★
のっけからアラビアンテイストで構成された曲。とはいえネタが尽きたかのような歌の展開。3語か4語の単語で構成されたフレーズを淡々と連呼するサビ。9曲目ともなるとワンパターンな感じは否めない。アラビアンテイスト以上のひねりが欲しい・・・。
10.Lucid Dreams ・・・ ★★★
当アルバム発売から遡ること4ヶ月前の8月19日。ファンもフランツ・フェルディナンド待ちきれずプロモーション用としてシングルカットされた曲。軽快でテンポのいいロックサウンド。かなりいい感じの仕上がりになっていて、ニューアルバムに対する期待は高まるばかりであった。いざ、蓋を開けてみればこの曲、アルバム最長の8分弱という曲に変化。シングルよりも軽快さは薄れ、シングルではギターポップナンバーだったが、デジロックナンバーに。音が右へ左へとぐるぐる移動し終わったかと思えば延々とデジタル音が鳴り響く。個人的にはいやではないが、シングルヴァージョンの方が好き。
11.Dreams Again ・・・ ★★☆
ラス前にふさわしく?かわいらしく優しい歌。今作中一番優しいヴォーカルに今作中一番静かな電子音で子守唄のように歌われる。
12.Katherine Kiss Me ・・・ ★★★
ここでようやく3曲目の邦題がなぜ『キャサリン』なのか意味が分からなくもなくもなくなる。最後は派手に決めてくれるかと思いきや3曲目の編曲でアレックスのギター弾き語り。歌詞は3曲目とほぼ一緒でキスをおねだりしていた相手がキャサリンで、3曲目のサビを抜いて骨抜きにしたユーモアあふれる内容となっている。でも最後は派手にいって欲しかったね~。ま、このアルバムらしい終わりかたかな。
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